Runner.04 シゲ

「小説家になろう」(以下「なろう」)にて大きな人気を博する『異世界でスローライフを(願望)』(以下『スローライフ』)。
本作を手がけるシゲは、一体どのように本作の独特な世界観と、活躍する登場人物たちを作りあげたのか。
このインタビューをとおして、プライベートな一面とともに、創作活動の原点に迫ろう。


――まずは「なろう」との出会いからお伺いできればと思います。どういったきっかけで「なろう」を見つけたのでしょうか?
シゲ
確か最初のきっかけは、マイクロマガジン社より刊行されている『転生したらスライムだった件』のコミカライズを読んだことですね。
スライムを主人公に据えている設定もさることながら、どんどんと強くなって無双をする爽快感にも面白さを感じ、心惹かれたのを覚えています。
今となってはそういった系統の作品も多くあると思いますが、当時、自分の中ではまったく新しい存在でした。
なので初めて読んだ時、「ああ。すげえなぁ」と。
――講談社さんより刊行されているコミカライズですね。
シゲ
はい。
コミカライズを読んで原作小説を知り、インターネットで調べているうちに「なろう」にたどり着いたんです。
――そして『スローライフ』を「なろう」に投稿するようになったんですね。ちなみに、小説は以前から書いていたのでしょうか?
シゲ
いえ、『スローライフ』で初めて書きました。
私はゲーム系の専門学校に通っていたのですが、その時に専攻していたのはプランナーのほうだったので。
――シナリオ専攻ではなかったんですね。
シゲ
そうなんです。
当時から小説を書くことに興味はあったのですが、最後の一歩が踏み出せていないという状況で。
専門に通っていた時から漠然と「作品のクレジットに自分の名前を載せたい!」という気持ちはあったんですよね。
ですが、家業を継ぐことになってクリエイターの職に就くのが難しくなった。
毎日仕事に行って、パソコンいじって「なろう」で作品を読んで寝る、という生活サイクルができていたんですけど、「このままじゃマズい!」という気持ちになって。
そして、WEB上でもいいのでひと作品作ってみよう、と思ったのが『スローライフ』を書き始めたきっかけです。
――自身の中にある世界を言葉で表現することはモチロン難しいことだと思いますが、初めての作品執筆では、どんなところに一番苦労をしましたか?
シゲ
やはり文章を書くこと、特に地の文を書くことが大変でしたね。
自分の中では3人称視点の文章って、言い回しや表現が格好いいんですよ。
でも、自分の技量では難しいなと。
その為、1人称視点で書き始めたんですが、自分なりに文章を書いてみても「これはキチンと意味が通じているだろうか?」と不安になったことは数知れず。
それでも、悩んでいても仕様がないので「とりあえず書こう!」という勢いで書いていましたね。
――悩みや葛藤もありつつ、それでもペンを握り続けたというわけですね。
シゲ
そうですね。
その不安があったからこそ、はたして『スローライフ』は読者の方にとって面白いものになっているのか、ということも私にとって気がかりでした。
ですが、丁度本作を投稿し始めた時ぐらいにプレイしていたゲームに大きな感銘を受けたんですよ。
あざらしそふとより発売されている『アマカノ』というPCゲーム。
この作品は、たとえばループやどんでん返しのようなシナリオ的なギミックはないのですが、ずば抜けてヒロイン達が可愛かったんですよね。
「キャラクターが立っていてかわいければ、作品は面白くなる」ということを、『アマカノ』をプレイして身をもって知ったんですよ。
――それからは執筆の際、「キャラを立てること」を第一に意識するようになった。
シゲ
あとは展開や設定など、自分の好きなものを詰め込むということも併せて意識するようになりました。
自分が書きたいことを書き切れば、仮に批判的な感想コメントが多かったとしても、自分自身は満足ですから。
――投稿し続けることのモチベーションにも繋がる、とても大切な要素だと思います。ほかにも作家業をしていてやる気に繋がるような、うれしかった出来事などはありますか?
シゲ
やはり読者の方から感想をいただいた時でしょうか。
どんな感想でもうれしいのですが、自分が書いていてすごく楽しかったところ、そこをピンポイントに褒められた時は「よし!」って心の中で思わずガッツポーズしちゃいますね。
――では、シゲさんにとってオフの日にする最高の贅沢は?
シゲ
気心の知れた友人と行く温泉旅行ですね!
特に群馬県の草津温泉が好きなんですよ。
朝風呂に入るために朝4時に家を出て、温泉に入って、帰り際におそばを食べる。
14時くらいには家に帰って来るので、日帰りが多いですけどね。
――かなりの突貫スケジュールですね。
シゲ
それでも私は車を運転するのも苦にならないので、移動中もイヤじゃないですし、何より車内で友達とわちゃわちゃと騒ぐのが本当に楽しいんです。
あれはいい気分転換になりますね。
――ちなみに今行ってみたい温泉地などはありますか?
シゲ
岐阜県の下呂温泉ですね。
いとこが岐阜に住んでいるので、そこに顔を出すついでに行ってみたいなあと。
のんびりと温泉につかりたいですね。
――ほかには何かハマっているものは?
シゲ
ハマっている、とは少し違うかもしれませんが、暇潰しにソーシャルゲームは何個かプレイしていますね。
まあ、ログインボーナスをもらっているだけのゲームもありますが……。
――確かにソーシャルゲームはいい気分転換になりそうな気がします。
シゲ
ですが、シナリオがウリの作品では物語は基本的に読まないようにしているんです。
――それはなぜでしょうか?
シゲ
私がいろいろなものにハマりやすくて影響を受けやすいので、引っ張られてしまうかもしれないからですね。
特に執筆作業中などは、自分の書きたいものを書き切るためにも読まないようにしています。
そういう意味ではWEBに投稿している『スローライフ』は、自分のやりたいようにやっているので、これもひとつの趣味と言えるかもしれませんね。
――では、これから先何かやってみたい趣味などはありますか?
シゲ
創作にまつわることはなんでもやってみたいですね。
それこそ、今は全くの素人ですが、絵も描いてみたいです。
ガレージキットで彩色やらをしたうえでフィギュアも造ってみたい。
お話ししたとおり、以前は小説を書くことも最後の一歩が踏み出せずにいましたが、それを乗り越えたおかげで、今はやりたいことをやるのに躊躇することもないですから。
――どんなことでも創作活動の糧になりそうですからね。それでは、何か書いてみたいジャンルの小説などはあるのでしょうか?
シゲ
自分のキャパシティが追いつかないから書いてないだけで、次に書こうと思っている作品は4~5個くらいあるんですよ。
その内のひとつは日本の鬼を題材にした作品なのですが、まだ固まっておらず……。
もしかしたら、いつか「なろう」に投稿するかもしれませんので、楽しみにしていただければ!
――それは楽しみですね。作品の一読者として、首を長くして待っています! 話は変わりますが、シゲさんにとって『転生したらスライムだった件』、『アマカノ』以外でバイブルといえるような作品はありますか?
シゲ
オタクになるきっかけとなった、すたじおみりすペレットというブランドから発売されていた『チュートリアルサマー』というPCゲームですね。
後にAXLというブランドに改名されましたが、このブランドの作品は、読んでいてついクスリとしてしまうようなお話も多いんです。
SDキャラもかわいいので、印象に残っています。
あとは、マッグガーデンから刊行されていた『ARIA』でしょうか。
――『ARIA』はどういうところに惹かれたのでしょうか?
シゲ
やっぱりあの独特な雰囲気と世界観ですね。
もしネオ・ヴェネツィアに異世界転生できるなら、チート能力なんかなくても絶対に幸せでしょうから。
行ってみたいですね~、そしてじゃがバターを食べたいです!
――それでは、「なろう」に投稿されている作品でハマっているものはありますか?
シゲ
最近は公私ともにドタバタしているため、なかなか「なろう」の作品は読めておらず……。
ですが、Twitterでお知り合いになった方たちが投稿している作品は全部気になっているので、早く読みたいですね。
――ありがとうございました。では最後に、『スローライフ』の最新第3巻が今冬に発売されると思うのですが、読みどころを聞かせてください。
シゲ
第3巻は「なろう」に投稿している第3章部分を収録予定なのですが、序盤からがっつりと加筆しています。
といっても、内容を変えているわけではありません。
「なろう」に投稿しているストーリーを補足して、読み応えがあるようにしています。
WEB版を既読の方にも満足いただけるように、キャラクターのエピソードも深く濃くするようにがんばって作業をしているので、どうか楽しみにしていてください!
また第3章で活躍するオリゴールは、イラストでも皆様にお披露目できるかなと思いますので、そちらもお楽しみに!
Profile

シゲ しげ

作家。『異世界でスローライフを(願望)』を手がけている。
現在第1~2巻がオーバーラップノベルスより発売中。
最新第3巻は今冬発売予定。
https://www.amazon.co.jp/dp/4865543791