Page.04 甘味みきひろ

イラストレーターのインタビュー企画である本企画。
第4回目を飾るのは、アニメ化もされた『空戦魔導士候補生の教官』のイラストを手がける甘味みきひろ。
オーバーラップ文庫にて『魔法使いです。勇者のパーティーを抜けたいです。』のイラストも担当している氏のプライベートや創作、イラストの原点に迫るインタビューをお届けしよう。


――子供の頃からずっと絵を描いていたのでしょうか?
甘味みきひろ
ラクガキのような絵は子供の頃から描いていました。
ですが、本格的に描き始めたのは大学受験の時ですね。
――それは受験で必要だったからでしょうか?
甘味みきひろ
はい。
私は理系だったので、本命では薬科大学を志望していたんですが、それとは別に芸術大学も志望していたんです。
そして芸術大学の試験科目にデッサンの実技があったので、習いに行くことになったんですよね。
思えば本格的に絵を描いたのはその時かなと。ですが後から気づいたのですが、私が志望していた芸術大学の学科の試験科目は、数学・英語・小論文のみだったので、デッサンは必要なく(笑)。
――試験科目の認識違いはよくありますからね(笑)。そして進学をしたのは芸術大学のほうに?
甘味みきひろ
そうなんです。
ですがその時はまだ「自分は絵で食べて行くんだ!」とは考えていませんでした。
というのも、芸術大学に入った当初はテレビ関係のお仕事につきたいと考えていたんです。
なので大学ではSOFTIMAGEでCGを勉強したり、SFX(特殊撮影)などを学んだりしていました。
――ではイラストレーターを志したのはいつ頃のことなのでしょうか?
甘味みきひろ
うーん。
志した、というタイミングがあったわけではないですね。
むしろ、気づいたらなっていた、という感じでしょうか。
――なるほど。ちなみに甘味さんは株式会社アクアプラスに籍を置いていたこともあるようですが、こちらはどういう経緯があったのでしょうか?
甘味みきひろ
大学在学中と卒業してからしばらくは、主にアニメを手がける会社でバイトをしていたんです。
そこで背景をやったり、別件でアニメのデジタル彩色のお仕事をやったりしていました。
ですが、きちんと就職しなきゃなあと思い、夏頃、アクアプラスに自分の作品を送ったことがあったんです。
そうしたら選考を通過したので、そのまま入社しました。
――アクアプラスさんに入社しようと思ったのには何か理由があるのでしょうか?
甘味みきひろ
カワタヒサシさんに憧れていたからです。
そもそもアクアプラスに入る前は、アニメの背景などは描いていましたが、いわゆる「ギャルゲーっぽいイラスト」は描いていなかったんですよ。
それでもアクアプラスで働きたいと思ったのは、カワタヒサシさんをはじめ、みつみ美里さん、甘露樹さん、なかむらたけしさんのような第一線で活躍されている方々がいらっしゃったからです。
――美少女キャラクターを描き始めたのはアクアプラスさんに入社してからというのは、驚きですね。
甘味みきひろ
はい。
とにかく会社の雰囲気に合った商品を描かなきゃという事態になり、思い詰めて「ギャルゲー系統の絵柄を真似る」ことで人物を描くことを覚えていきました。
ですが、だからこそ大きな悩みを抱くことになりまして……。
――ご自身のイラストとは何ぞや? ということでしょうか?
甘味みきひろ
そうです。
自分のイラストをどうやって確立させたらいいのか分からなかったんです。
最初が真似から入ってしまったので。
そしてそのスランプを乗り越えるきっかけになった作品が、KADOKAWA 富士見書房さんから刊行されている『空戦魔導士候補生の教官』でした。
あの作品をやっていなければ、未だに自分の絵柄が分からない、という事態から抜け出せていなかったかもしれません。
――スランプを抜け出すきっかけとなった挿絵の仕事もしつつ、ゲームの原画にも携わっていたんですね。
甘味みきひろ
その時は非常にタイミングが良くて。
なので小説の仕事も受けることができました。
原画としてお仕事しつつ、そういった小説のお仕事にも携わっていたんですが、紆余曲折があって、友人に誘われて別の会社に入社。
そして独立してフリーのイラストレーターになった、という感じです。
――別の会社でもイラストのお仕事に携わっていたのでしょうか?
甘味みきひろ
そうですね。
小説やゲームのイラストのお仕事を受けていました。
――ただひたすらに絵に携わるお仕事を続けていた結果、イラストレーターになったという感じなんですね。
甘味みきひろ
はい。
背景、デジタル彩色、原画、そして小説のイラストといろいろやってきましたが、私としては「ただ絵が描きたい!」という気持ちが根底にあったんだと思います。
――ではそんな甘味さんが考える、イラスト上達のために最も重要なこととはなんでしょうか?
甘味みきひろ
まずはひたすら描くこと。
それに尽きると思います。
あとは自分自身でこだわりを持つことでしょうか。
ただ数をこなすだけでなく、背景が好きだったら背景にこだわってイラストをキチンと完成させる、という感じです。
私はキャラクターの足が好きなので、足にこだわったイラストばかりを描いていた時期もあったほどです(笑)。
――確かに無為に数をこなすより、自分なりの目標を立てたほうが上達には繋がりそうですね。
甘味みきひろ
あとはイラストを描くことを苦行にしてはいけないですからね。
自分のこだわりポイントや好きなポイントを入れられれば楽しく描けるじゃないですか。
――楽しければ続けられる、そして続けられれば上達もする。
甘味みきひろ
良いことづくめだと私は思います。
あとはインプットを大切にすることでしょうか。
私の場合は流行しているアニメは必ず見るようにしているんです。
人気を博しているアニメはストーリーや構成が優れているのもあると思いますが、イラスト、つまりキャラクターデザインの面でも視聴者を惹きつける流行のようなものがあるからこそ受けている、と私は考えているんです。
そんな流行を自分のイラストの中にも盛り込むことは、常日頃から意識しています。
同様の理由で、pixivもよく見ますね。
――確かに流行り廃りに敏感であることは、クリエイターの方にとって重要なことのように感じますね。勉強になります……! ちなみに先ほどキャラクターの足が好きとおっしゃっていましたが、ほかに何かご自身のイラストでこだわっているポイントは?
甘味みきひろ
うまく言葉にはできないのですが、完成したイラストが上手に描けていた場合、そのイラストから「かわいいオーラ」が出ていることがあるんですよ。
私のフィーリングでしかありませんが、自分の中で「ここが魅力的だ!」と思えるポイントがイラスト上で生きていれば、そのオーラが垣間見えるような気がするんです。
それが感じられず、ボツにしたイラストもじつはけっこうあるんです。
――甘味さんのイラストにかける情熱がひしひしと伝わってくるようなエピソードですね。ここで話は変わりますが、甘味さんにとってバイブルと言える作品はなんでしょうか?
甘味みきひろ
アニメ映画の『魔女の宅急便』ですね。
エンターテイメントコンテンツに興味を持ち始めるきっかけになった作品です。
好きすぎて、宮崎駿さんが描いたキキのイラストをひたすら模写していたこともありました。
その影響で、今でも若干その時のイラストのクセみたいなものが線に出ることもあるぐらいです。
――キャラクターの足が好きというのも、もしかしたら『魔女の宅急便』が原点かもしれませんね。
甘味みきひろ
そうかもしれません(笑)。
ワンピースで箒に乗るので、足もよく見えますから。
あと、私が一番描くのが得意な女性キャラクターは、だいたいキキぐらいの年齢のキャラなんです。
逆に、二十歳を越えたぐらいの女の子を描くのにとても苦心をする時もあり。
私が描くとつい顔が幼くなってしまうので。
――好きだからこその苦悩ですね。お仕事に関するお話ばかり聞いてしまいましたので、少しプライベートにまつわるお話もお伺いできればと思います。お仕事のないオフの日はどんなことをしているのでしょうか?
甘味みきひろ
最近はもっぱらゲームですね。
Steamで面白そうな作品を見つけてはプレイをして、というような感じです。
――では今ハマっているゲームは?
甘味みきひろ
Starbreeze Studiosから発売されている『Dead by Daylight』です。
ドハマりしてしまい、廃人のようにプレイしています。
プレイしすぎて周囲からは「もう配信でもしたらいいじゃん」と言われるほどです。
Live2Dの勉強もしているので、ゆくゆくはバーチャルYouTuberを作って実際に配信したら確かに面白そうだなあと。
――それが現実となるよう、ひとりのファンとして心からお祈りしています……! ほかに何か気分転換の方法などはありますか?
甘味みきひろ
引っ越しの際に売ってしまったので最近はご無沙汰ですが、ピアノを弾くことですね。
あれは良い気分転換になりました。
――ピアノが弾けるんですね!
甘味みきひろ
はい。
Keyの作品『Air』の「夏影」をピアノで演奏した動画をYoutubeにアップしたこともあるんですよ。
もちろんアカウント名は「甘味みきひろ」ではありませんが……。
――ありがとうございました! では読者の方にメッセージをお願いできますでしょうか。
甘味みきひろ
私がイラストを担当している『魔法使いです。勇者のパーティーを抜けたいです。』の第2巻は、2019年初頭にはお届けできるかなと思います。
精一杯がんばりますので、どうか楽しんでいただければうれしいです!

Profile

甘味みきひろ あまみ・みきひろ

『魔法使いです。勇者のパーティーを抜けたいです。』を手がけているイラストレーター。
現在は第1巻がオーバーラップ文庫より発売中。
第2巻は2019年初頭発売予定。
https://www.amazon.co.jp/dp/4865543619