Page.02 白井鋭利

イラストレーターのインタビュー企画である本企画。
その第2回目を飾るのは、『灰と幻想のグリムガル』(以下『グリムガル』)のイラストを手がける白井鋭利。
幻想的なテイストにて描かれる氏のイラストの原点とはいったい何なのか。
インタビューからその一端を探ろう。

――覚えている範囲で、イラストを描き始めたのは?
白井
はっきりと覚えていますが、幼稚園のころですね。
幼稚園で描いた似顔絵を母に見せると、母が褒めてくれたんですよ。
それがとてもうれしくて。
小学生、中学生、高校生と年を重ねてもずっと絵を描き続けたのは、その影響が大きいと思います。
――小学生の頃は、どういったイラストを描いていたのでしょうか?
白井
「週刊少年ジャンプ」(以下「ジャンプ」)の『ONE PIECE』や『NARUTO-ナルト-』に登場するキャラクターのイラストですね。
小学校ではクラスでちょっと絵がうまいと、周囲が「すごいね!」とか「上手だね!」と言って褒めてくれるじゃないですか。
なので、クラスでも人気のあった「ジャンプ」作品のイラストをたくさん描いていました。
――最初からオリジナルのイラストを描いていたわけではなく、版権のイラストも描いていたんですね。
白井
はい。
オリジナルのイラストを描き始めたのは、確か中学生になったころだと思います。
描き始めたきっかけとかは特にないのですが、自分は版権が好きというよりは、絵を描くことそれ自体が好きなんだと思います。
だから、気づいたらいつの間にかオリジナルを描いていた、という感じですね。
――オリジナルイラストを描くに際し、白井さんが最も影響を受けた作品があれば聞かせてください。
白井
天野明先生の『家庭教師ヒットマンREBORN!』(以下『リボーン』)と、安野モヨコ先生の『シュガシュガルーン』ですね。
『リボーン』は、僕がひたすら模写をしていた作品なので、画風面での影響は大きいと思います。
『シュガシュガルーン』に関しては、テイストの部分でしょうか。
作品のオシャレな感じというか、ファッショナブルな感じにとても憧れていましたから。
――では、絵を描くことをお仕事として意識し始めたのは?
白井
それも中学生の時です。
それこそ『リボーン』が好きだったので、「ジャンプ」で連載をする漫画家になりたいなと。
高校に進学してからも、漫画家の夢は抱いたままでした。
ですが、学校の先生や友達から猛反対にあいまして……。
夢が潰えた瞬間でした(笑)。
――それでも、好きだからこそ絵を描くことはやめられなかった。
白井
そうですね。
夢は潰えましたが、「イラストに携る仕事がしたい」と強く思ってはいたので、自分の画力向上のためにもデザインの専門学校に進学。
そしてその在学中に、ご縁があってライトノベルのイラストレーターとして商業デビューさせていただきました。
――デザインの専門学校にいたからこそ、ご自身のイラストに生かせているスキルなどはあったりするのでしょうか?
白井
今でこそメジャーな技法ですが、色ズレを利用した色収差の加工などを施すようになったのは、グラフィックを勉強していたからこそだと思います。
そういった彩色や加工の技術を学べたのは本当に良かったですね。
――イラストに対して、とても貪欲な印象を受けますね。ほかに、イラスト上達のために何かしていたことは?
白井
流行っているイラストをたくさん見ること、そしてその流行りのイラストで使用されている技法を調べて習得することは行っていました。
あとは、定期的にPixivといったWEBサイトにイラストを投稿することでしょうか。
イラスト上達のため、とはちょっと違いますが、投稿していたおかげでお仕事をいただけたのかな、と思うので。
――では、今までイラストレーターとしてお仕事をしてきて、一番うれしかった思い出を聞かせてください。
白井
月並みな回答になってしまいますが、自分がイラストを担当したライトノベルを初めて書店で目にした時はうれしかったですね。
あと、『グリムガル』のアニメ第1話がテレビで流れた時、どうやら母や祖母やいとこが集まって、皆一緒に見ていたそうなんです。
そして放映終了後に「やったな!」と僕に電話がかかってきたのも感慨深いエピソードですね。
――次に白井さんのイラストに関してお話しを聞かせていただきます。イラストを描く時に、一番意識するのはどういった部分でしょうか?
白井
そのイラストの雰囲気です。
その雰囲気を表現するために、色合いやテイスト、塗りを自分の中で大まかにイメージしてから、筆を走らせるという感じです。
――実際の作画作業に入ってから、一番時間をかけるのは?
白井
アフターエフェクトや、レベル補正を使った加工であったり、彩度や色味の調整といったところですね。
キャラクターの胸やお尻といったパーツを強調するための調整というよりは、そのイラストの雰囲気を自分が最初にイメージした雰囲気に近付けるための調整というものに時間を割きます。
――よく使用するエフェクトにはどういったものが?
白井
「光」のエフェクトでしょうか。
自然光で影になるところに、あえて青い光のエフェクトを入れたり、といったことはします。
――ちなみに、その「光」のエフェクトを入れることによって、どんな効果が期待できるのでしょうか。?
白井
キャラが立つような気がするんです。
あえて普通入らないような光の色を入れることで、キャラクターが輝いて見えるというか。
……感覚的なところなので、具体的に説明するのは難しいですね(笑)。
――1枚1枚のイラストに時間と想いをかけて取り組んでいる、というのがひしひしと伝わってきます。そのぶん、苦労や疲労もひとしおだと思いますが、たとえばオフの日などはどんなことをして過ごすのでしょうか?
白井
家で海外ドラマを見ることが多いですね。
最近だとNetflixで配信されている『ブラック・ミラー』や『ストレンジャー・シングス 未知の世界』などが面白くて。
あとは家で犬を飼っているので、その犬と遊んだりもしています。
――大きなお仕事を終えた後の、一番の気分転換の方法は?
白井
ショッピングです。
一日中新宿近辺のお店をはしごしたりすることもありますが、洋服を買ったり、ウィンドウショッピングをすることが、いいストレスの発散にもなるんですよ。
――では、さまざまなジャンルの作品でイラストを手がける白井さんではありますが、挑戦してみたいジャンルの作品はありますか?
白井
作品のジャンルとは少し異なりますが、やはりかつての夢だった「漫画」には挑戦したいですね。
漫画の練習をしていて気づかされたのですが、僕はいろいろな角度から人物や物を描くのがあまり得意ではないんです。
漫画を描けるようになると、人物の動きはもちろんのこと、さまざまな角度から物を描けるようになり、イラストレーターとしての表現の幅も広がりそうですから。
――白井さんの描く漫画、それは是非読んでみたいですね! 次に、イラストレーターとしての今後の目標を聞かせてください。
白井
自分としては、パッとしなくとも細く長く食べていけるイラストレーターになりたい、という思いがあります。
やはり絵を描くのは本当に好きなので、ずっとイラストに携わっていたいですから。
イラストレーターの世界は流行り廃りが厳しいので、今どんなイラストが流行っていて需要があるのか、というところにいつもアンテナを張っておく。
自分の持ち味はキチンと残しつつも、臨機応変にいろいろな物を吸収する。
そんな常に変化して仕事をしていけるイラストレーターになりたいなと。
――ありがとうございました。では最後にファンの方々にメッセージをお願いいたします。
白井
僕はあまりSNSでつぶやいたりはしないのですが、それでもたまに『グリムガル』のことをつぶやくと、たくさん反応をいただけるのがすごくうれしいです。
また、僕の絵を好きだと言って見てくださっている方、本当にありがとうございます。
今の自分があるのは、応援してくださっている皆様のおかげです。
いろいろくじけそうな時もありますが、励ましのコメントや応援の言葉ひとつひとつが僕のモチベーションにつながっています。
僕自身も作品とともに成長できるようにがんばりますので、今後とも『グリムガル』と白井鋭利を応援いただければ!

Profile

白井鋭利 しらい・えいり

『灰と幻想のグリムガル』のイラストを手がけているイラストレーター。
最新第13巻、およびドラマCD付き特装版の発売日は2018年6月25日。
https://www.amazon.co.jp/dp/4865543457