Page.01 たかやKi

イラストレーターのインタビュー企画である「絵描きの妄想ノート」。
第1回は『ありふれた職業で世界最強』(以下『ありふれた』)のイラストを手がける、たかやKi氏にインタビューを敢行!
氏が語るイラスト上達のためのメソッド、そしてイラストのつぼ。
これを読めば、そのすべてわかること間違いナシ!

――まずは、いつ頃から絵を描くようになったのか教えてください。
たかやKi
落書きレベルのお絵描きであれば、5歳ぐらいからでしょうか。
幼なじみといえるような友達もいたのですが、家が離れており……。
当時は紙と鉛筆が遊び相手、というような感じでしたね。
――どういったイラストを描いていたのでしょうか?
たかやKi
ヘリコプターや新幹線といった乗り物やメカばかり描いていました。
小学校にあがると、周囲のクラスメイトは『ドラゴンボール』のカードダスを見て、 イラストを模写したりしていましたが、 私は『ゾイド(ZOIDS)』や『SDガンダム』などをひたすら描いていた覚えがあります。
人物を描くことにあまり興味がなく、描き始めたのは確か高校の頃だったかなと。
――それには何かきっかけが?
たかやKi
高橋留美子先生の『うる星やつら』にハマったのが大きなきっかけでしたね。
『犬夜叉』から高橋先生の作品に入って、どんどん過去作品をさかのぼっていったんです。
そして『うる星やつら』に行き着き、あの世界観にどっぷりハマって。
好き過ぎて、作品のファン広報誌にもイラストを描いて投稿していました。
人物を描き始めるようになってからは、「色塗り」をもっと上手になりたい! と思うようになり、カラーインクやコピックでの塗り方が書かれた本をよく読むようになりました。
あとは角川書店から出版されていた「HOW to ARTアート探険隊」シリーズは、 いろいろな作家先生のイラストを描く工程が詳しく載っており、ボロボロになるまで読み込んだ覚えがあります。
――ではイラストレーターを志すようになったもそれぐらいの時なのでしょうか?
たかやKi
高校時代はあくまでイラストは「趣味」で、「仕事」として意識しはじめたのは専門学校に入ってからでしたね。
専門学校では就職での間口が広そう、という理由でデジタルデザインを専攻しましたが、 あまり身にはならず……。そんな時、友人からPCゲーム『リトルMyメイド』を借りてプレイしたんですよ。
原画を手掛けていた、しかげなぎ先生が描く女の子のかわいさにやられまして。
それまではギャルゲーやPCゲームに触れていなかったのですが、 この作品をきっかけにして美少女イラストに引き込まれ、そっち方面も面白そうだなと思うようになりました。
――では専門学校を卒業して、ゲームメーカーへ就職を?
たかやKi
それが、何度か採用には応募をしたんですが、残念ながら不採用でして……。
それからは、アシスタント経験をきっかけにマンガ家を志して絵を描くようになりました。
当時は26歳までにデビューできなければ、別の職を、とも考えていたんです。
やっと、コアマガジンの「コミックメガストアH」で商業デビューを果たしたのが26歳になる4か月前。本当にギリギリでしたね。
――それからマンガ家として第一線で活躍し続け、ライトノベルの分野にも活躍の幅を広げられたのですね。
ちなみにたかやKiさんにとって『ありふれた』はどのような作品でしょうか?
たかやKi
ライトノベルのお仕事に対する意識というか、それまでは、『自分はマンガ家……』という無意識の“縛り”みたいなものがあって、 どうしてもマンガのお仕事をメインで考えがちだったんですが、『ありふれた』に携わってからは、 「自分はもしかしたらマンガよりもライトノベルのほうが向いているのかもしれない」と思えるようになったんです。
また、今まで成年誌等で描いていた時は、どうしても読者層のメインは20歳以上になります。
ですがライトノベルだと中高生の若い人たちにも読んでもらうことができますし、幅広い年齢の方に私の絵を知ってもらうきっかけにもなったのかなと。
――「ライトノベルのほうが向いているかも」と考えた理由とは?
たかやKi
漫画のお仕事ではネーム作業がとにかく苦手で。
なんとかネームを仕上げても、作画に入る前からヘロヘロになってしまうことが多くて。
作画作業は好きなんですけど、ネームで時間を取られて、結局作画時間が削られてしまうのが辛かったんです。
マンガを描きたいというよりは作画作業に没頭したい部分のほうが大きかったんでしょうね。
ライトノベルのイラストでは作画に集中できて、課題も多いですけど、普段趣味では描かない物も描く良い機会にもなって、楽しいです。
――商業イラストを描く際にたかやKiさんが意識していることとは?
たかやKi
絵を描くお仕事では当たり前のことではあるんですが、カメラアングルやポージングですかね。
カメラアングルはなるべく俯瞰か煽りにして、あまり水平にはしないようにしています。
またポージングに関しては、動きのあるイラストに自分が惹かれるので、なるべく素立ちにはならないようにしていますね。
できる限り何かしている最中の女の子の仕草を切り取って絵にしたいなと。
あと描いていて一番熱が入るのは腰回りです。当然ながら衣装を着せるので、隠れちゃう部分ではあるのですが、 下書きの段階でそこをしっかり描いておかないとバランスが悪くなってしまう。
なのでどんなイラストでも、まずは裸で腰回りをしっかりと描き、それから服を描いていくという感じです。
ほかにも、女の子のトップスとボトムスの間からチラリと覗く素肌は好きですね。
――イラストレーターとして「こんな作品に携わりたい」というものがございましたら聞かせてください。
たかやKi
宇宙戦艦や宇宙戦闘機が出てくるような作品でしょうか。
ほかには『フロントミッション』シリーズのような世界観や、 もしくは『フルメタル・パニック!』のような現代が舞台で、 それにSF要素が加えられているような作品ですね。描くのは大変そうですが、 小さい頃に乗り物やメカを好きで描いていたので、キャラと同じくらいメカが主役な作品にも携わってみたいです。
――次にたかやKiさんが憧れるイラストレーターさんのお名前を聞かせてください。
たかやKi
専門学校時代に感銘を受けたのは、椎名優先生、田中久仁彦先生、四季童子先生です。
椎名先生はデジタルだけども厚塗りという表現をかなり昔からされていて、 上手く言えないのですが「今風の絵」の先駆けだと思うんです。
田中先生はガッシュ塗りなイラストのプロフェッショナルだと思いますし、 四季童子先生は線画をキレイに描いたあとにカラーインクで透明感の出る繊細な塗りをされている……。
今でも憧れている先生方ですね。
――では、今個人的に注目しているイラストレーターさんはいますか?
たかやKi
Anmi先生や木shiyo先生、Mika Pikazo先生です。先生方のイラストはずっと眺めていられます。
色使いや塗りの質感が、とても勉強になるんです。
あと、具体的にこの方、というのではありませんが、スカートのプリーツの自然な描き方ができているイラストレーターさんはすごいなあと思います。
――話は変わりますが、たかやKiさんが考える、イラスト上達のために重要なこととはなんでしょうか?
たかやKi
一枚一枚を完成までもっていく、とかでしょうか。
自分の場合は頻繁にお絵描き掲示板に投稿したりお絵かきチャットに入り浸ったりしていました。
また、ただ数をこなすだけでなく、「今日は昨日よりもう少し上手く色を塗ってやろう」とか「今日はもっといい構図にしてみよう」とか目標も立てる。
少しずつでいいので、それを完成イラストに反映させていくことが大切だと思います。
――お絵描き掲示板のような、イラストを発表できる場を見つけることも重要な気がしますね。
たかやKi
そうですね。私の場合、イラストが上手な方がたくさんいるお絵描き掲示板に飛び込んで、 憧れの人からコメントをもらうまでがんばって投稿を続けるといったモチベーションの上げ方が出来たのがとても幸運でした。
今はもうお絵描き掲示板の文化は下火になってしまいましたが、TwitterやPixivもそういう使い方はできると思うんです。
「がんばろう」と思える環境を見つけるのも、後々になって大事だったんだなーと思います。
――ありがとうございました。最後にファンの方へメッセージをお願いします。
たかやKi
いつも応援して頂き、ありがとうございます。ファンタジー要素の強い作品というのが初めてで毎度苦労しておりますが、 毎巻ごとに少しずつでも魅力を増やしていけたらと思ってイラストを描かせていただいておりますので、今後も暖かく見守っていただけましたら幸いです。

Profile

たかやKi たかやき

『ありふれた職業で世界最強』のイラストを手がけているイラストレーター、マンガ家。
最新第8巻、およびドラマCD付き特装版の発売日は2018年4月25日。
https://www.amazon.co.jp/dp/4865543082