第10回オーバーラップ文庫大賞特別編 北条連理

今回の「作家のしゃべり場Z」は特別編!
第10回オーバーラップ文庫大賞の受賞者、計3名のインタビューを一挙公開するぞ。
『これが「恋」だと言うのなら、誰か「好き」の定義を教えてくれ。』(以下『恋くれ』)で〈金賞〉を受賞した北条連理に、作品やその見どころについて、そしてオーバーラップ文庫大賞について聞いた。


――まずは『恋くれ』を書き始めたきっかけを聞かせてください。
北条
思い返すと本当なのかと自分でも疑ってしまうのですが、きっかけは「謎の使命感に突き動かされて」でした。
ある日突然アイディアが頭の中に降ってきて、それから怒涛の勢いで執筆し始めたことをよく覚えています。
彼(悠)と彼女(光莉)の物語を「今この瞬間に書かなければいけない」と、なぜかそう強く感じたんですよね。
もちろん後付けで自分なりにこの作品を書く理由や意義はいろいろと見つかったのですが、一番初めのきっかけは、そんな訳もない衝動と使命感でした。
――北条連理さんはオーバーラップ文庫大賞をどこで知りましたか?
北条
どこで……と言われると難しいですね。
もともとラノベ読みだったこともあり、各ライトノベルレーベルに新人賞があることは自分で実際に書き始める前から存じていたので。
――北条連理さんが考えるオーバーラップ文庫のイメージは? そのイメージを踏まえて、本作をオーバーラップ文庫大賞へ応募しようと思った理由を聞かせてください。
北条
Web小説サイトからの拾い上げ作品が多いのと刊行作品の続刊率が高いイメージがあります。
応募しようと考えた理由は、まず、全ての作品に評価シートをいただけるという点に魅力を感じたからです。
それで客観的な評価が欲しいなと思って当時書いていた『恋くれ』とは別の作品を応募してみたのですが、なんとその作品が最終選考まで到達した上に、ものすごく丁寧なフィードバックをいただきまして……。
「こんなにちゃんと読んでくれるんだなあ」と、とてもうれしくなりました。
それから最終選考落選の悔しさもあり、リベンジの為に本作を応募したところ、受賞させていただいた次第となります。
――オーバーラップ文庫大賞では、1次選考からすべての応募者に対して評価シートが送付されます。何か印象に残っている評価コメントは?
北条
基本的にひとりきりで書き続けていたので、どの評価コメントも大変参考になったのですが、特に嬉しかったのは心理描写についてお褒めいただいたコメントですね。
個人的にも心理描写は自分の強みかなと考えていたので、それが単なるうぬぼれではないのだと分かってほっとしました。
――担当編集より受賞の連絡を受けた際の率直な気持を聞かせてください。
北条
うれしさのあまり、ちょっとその瞬間の記憶が曖昧でして……。
着信履歴があったのでドキドキしながら折り返し電話をかけたことまでは覚えているのですが、それ以降、一体何を口走ったかが分からない……。恐らくめちゃめちゃ喜んでいたと思うのですが……。
ただ、担当編集様のお声を聞いた時に抱いた「ああ、この方が見つけてくれたんだな」という強い感謝の念は今でもずっと心に残り続けております。
じつを言うと、その時は何を書いていても全然おもしろいと思えず、孤独に書き続けることに耐えかねて心が折れかけていたので、本当に救われた気持ちになりました……。少なくともひとりには届いたんだという確信は、何事にも代えがたい喜びでした。
――受賞にあたって、作品のどんな要素が一番評価された点だと思いますか?
北条
恐らくは同時代性とリアリティかと思います。
今この瞬間、この時代、この世界のどこかであること。
そこで登場人物たちも生きているんだ、と感じていただけるように、その2点は徹底的に意識したつもりです。
――本作のコンセプトを聞かせてください。また、そのコンセプトを大事にするため執筆時心がけたことがあれば、併せて聞かせてください。
北条
コンセプトはタイトルの通りです。
「恋」とは何か、「好き」とはどういう感情なのか——。その答えを探し出すのが本作の大きな目的となります。
その為、執筆においては登場人物の在り方にはひたすらこだわりました。 悠や光莉だったら一体何を思うか、何を言うのか、どういった行動をするのか。それらを徹底的に掘り下げ、リアリティを極限まで高めることを心がけましたね。でなければ、悠たちの心情を緻密に描写することができませんから。
ストーリーがあってキャラクターがいるのではなく、登場人物たちが物事を考えて動いた結果、その軌跡が物語になるように意識していました。
――発売に向け、現在は書籍化の作業が進行中だと存じます。何か苦労したエピソードはありますか?
北条
やはり文章表現ですかね……。納得のいく文章に仕上がるまでに一体何度書き直したことか……。
それで、読み返しすぎた結果もはや何もかもが分からなくなり、「これ何がおもしろいの?」と悩んだり、書いた文章をすべて没にしたい衝動に駆られたりなどしておりました(遠い目)。
執拗に原稿修正を繰り返す自分に根気強く付き合ってくださった担当編集様には、本当に頭が上がらないです。
――では、キャラクターデザイン・カバーイラストを始めて見た際の感想は?
北条
心の底から感動しましたね。長い付き合いなのに一度も顔を見たことがない親友と初めて会えたような感覚というか……。
自分の頭の中にしかいなかった悠たちに形が与えられて、生き生きと動き始めた感じがしました。
イラストレーター様って本当にすごいですよね……。
正直、初めてキャラクターデザインを拝見した時はあまりに良すぎてひっくり返っていましたし、それからも新たなイラストを拝見するたび、担当編集様に語彙力の消滅した感想を送りつけるサコ様の限界オタクと化しています。
もはやサコ様を信仰しているまであります。素晴らしいイラストをいただき、本当にありがとうございます……!
――本作を(特に)どんな方に読んで欲しいですか? その理由と併せて聞かせてください。
北条
無論、可能な限り多くの人に読んで欲しいと考えています。
ですが、その中でもあえて挙げるとしたら、世間一般で「普通」とされているものに違和感を覚えていたり、その「普通」との違いに苦しんでいたり、悩んでいたりする全ての人に届いてほしいなと願っております。
もちろん、本作を読むことでその人たちの苦しみや悩みが解消したり、救えたりするとは全く思っていません。ですが少なくとも、そばにいて寄り添うことはできるとは思うのです。誰かの為の物語になってほしい。そんな思いで書きました。
――最後に、オーバーラップ文庫大賞へ投稿をしようと考えている方へ、ひと言コメント(アドバイス)をお願いします。
北条
年に2回、賞の選考をしながら全ての応募作品にフィードバックを行う。それは、並大抵の労力で出来ることではないと思います。つまりオーバーラップ文庫様は、それだけの労力と時間をかけて、まだ見ぬ新しい作品を探してくださっているということです。
ですので、ぜひあなたの全力を叩きつけてみてください。尖らせて刺しに来てください。そうすればきっと、誰かがあなたを見つけてくれるはずです。それだけの懐の深さと情熱がオーバーラップ文庫大賞には確かにあります。
……などと、上から目線ですみません。偉そうなことを言っていますが、自分もまだまだ未熟です。そして、いつ報われるとも分からない、先の見えない暗闇を走る恐怖と苦しみも知っています。だから、一緒にがんばりましょう。
あなたの努力が実を結ぶ瞬間を、心の底から祈っております。
Profile

北条連理 ほうじょう・れんり

第10回オーバーラップ文庫大賞〈金賞〉を受賞しデビュー。
受賞作『これが「恋」だと言うのなら、誰か「好き」の定義を教えてくれ。』は2024年1月25日オーバーラップ文庫より発売。
https://www.amazon.co.jp/dp/4824007062