第6回オーバーラップ文庫大賞特別編 山口 隼

今回の「作家のしゃべり場Z」は特別編!
第6回オーバーラップ文庫大賞の受賞者、計4名のインタビューを一挙掲載。
『アガートラムは蒼穹そらを撃つ 1.三日月学園機関甲冑部の軌跡』(以下『アガートラム』)で〈銀賞〉を受賞した山口隼に、作品について、そして創作の原点について聞いた。


――小説を書き始めたきっかけを聞かせてください。
山口 隼
記憶は定かでないのですが、もともと本読みでしたので、小学生のころにはなんらかの物語を書いていたと思います。
好みだった時代小説、スポーツノンフィクションをサンプルにストーリー構成をしようとしていました。
その後現代エンターテインメント色の強い方向へ転換したのは高校時代、アニメやゲームに触れるようになってからです。
――小説執筆時、何か心がけていることがありましたら聞かせてください。
山口 隼
その時自分が取り組まなければいけないテーマを明確にすることです。
書かなければいけない内容、原点を明確にしておくことによって悩んでも戻って来られるようにするためで、ある意味プロットの基礎とも言えるかもしれません。
――それでは受賞作品である『アガートラム』を書き始めたきっかけはなんでしょうか?
山口 隼
青春の、一瞬だけの輝きという部分を書きたいという欲求が最初だと思います。
企画段階ではスチームパンクに影響を受けていた時期なので、それをどうライトノベル風に落とし込むか、暗いストーリーにはしないぞという模索の中で組み上げていきました。
――今までの新人賞への投稿歴を聞かせてください。
山口 隼
オーバーラップ文庫大賞には2、3度投稿させていただきました。
その他公募新人賞も合わせると10~15回程度だと思います。
――選考過程の評価シートにて、印象に残っている評価コメントがあれば聞かせてください。
山口 隼
ラストシーンについていい評価をいただいたことが印象に残っています。
最初は全く逆の展開だったのですが、原稿を進める最中で思い直し修正した難しいポイントだったので、その意外性と読後感の爽やかさに言及いただけたのは記憶に新しいところです。
――山口さんが考える、『アガートラム』のイチオシポイントはどんなところでしょうか?
山口 隼
蒼空というモチーフ、メインヒロインである高坂凪こうさかなぎの笑顔、機関甲冑アガートラムの恰好良さ。
全体を通して言えば登場人物たちの生き様で、彼らが部活動へ青春を賭す懸命さというところが僕の中では感じていただきたいところです。
――では『アガートラム』にキャッチフレーズをつけるとすると、どのようなフレーズになりますか? 理由と併せて聞かせてください。
山口 隼
『蒼穹に懸けた、ただ一度の夏』。
蒼空、空というところは作品のモチーフとして。そのうえで高校三年生の夏というのはもちろん一度しか来ないもので、だからこそ一瞬に懸けた輝きと熱さを描いたのが本作の特長じゃないかと思っています。
――『アガートラム』の受賞が決まった際の、率直な気持はどのようなものでしたか?
山口 隼
安堵というか、やっとひと区切りついたなという気持ちでした。
うれしかったのは一瞬だけで、これから発売までにどう改稿していこうか、また自分が物書きとしてやっていかなければという状況に不安を覚えていたと記憶しています。
不安に関しては今もそうですが。
――『アガートラム』を刊行するに際し、書籍化の作業も進んでいることと存じます。何か苦労されたエピソードなどはありますか?
山口 隼
改稿は都合四回に渡って行い、しかも毎回ほぼ全部取り換えだったので純粋に作業量として苦しみました。
またページ数もオーバーして削らなければいけなかったのも大変でした。
そのため、あとがきもないほどギリギリの構成ですが、最後まで楽しめると思ってご容赦ください。
――キャラクターデザインのイラストを見て、何か新たな魅力を発見できたキャラクターなどはいますか? 魅力を感じた箇所と併せて聞かせてください。
山口 隼
ひとつは凪でしょうか。
先にも凪の笑顔というのはキーになってくるかなと思っていましたが、いざビジュアルに上がってくると素晴らしく破壊力があって言葉を失いました。
またキャラクターではないのですが、機関甲冑アガートラムです。
登場人物たちが乗るガジェットのデザインは「近代的、先進的スチームパンク」という僕のぼやっとしたモチーフをたかまるさんに形にしていただいたのですが、予想をはるかに超えてスタイリッシュなデザインで感動しました。
イラストの力というのはすごいですね。
――『アガートラム』のどのようなポイントが、新人賞受賞のきっかけになったと考えていますか? 
山口 隼
ひとつには自分の経験をベースにキャラクターの葛藤を考え、描く努力をしたこと。
ですがそれだけではありきたりなので、ここに少しSF的である機関甲冑アガートラムという設定を加えてなじませた、いわゆる組み合わせのテクニックを評価いただいたのではと思います。
――最後に、オーバーラップ文庫大賞へ投稿をしようと考えている方へ、ひと言コメント(アドバイス)をお願いします。
山口 隼
とにかく書き続け、反省し、それを次に生かすということに尽きるかなと思います。
今作『アガートラム』のテーマのひとつでもあるのですが、成功するまで挑むという気持ちがあれば必ず誰かの心に響くものが出来上がると信じています。
自分の書くものに自信とプライドを持ち、挑み続けて欲しいなと思います。
Profile

山口 隼 やまぐち・しゅん

第6回オーバーラップ文庫大賞〈銀賞〉を受賞しデビュー。
受賞作『アガートラムは蒼穹そらを撃つ1.三日月学園機関甲冑部の軌跡』は2019年12月25日オーバーラップ文庫より発売。
https://www.amazon.co.jp/dp/4865545824