Runner.02 Y.A

WEB作家がリレー形式でインタビューを繋いでいく本企画。
その第2回目は『八男って、それはないでしょう!』を手がけるY.A。
新作『勇者の活躍はこれからだ! 異世界からの出戻り勇者は平穏に暮らしたい 』の発売を間近に控える氏に、その作品の魅力とプライベートな一面を赤裸々に語ってもらった。


――多くの作品を投稿しているY.Aさんですが、一日の執筆時間はどれくらいなのでしょうか?
Y.A
日によってまちまちですね。
書けるときに書く、というスタンスで執筆はしていますが、たいだい夜7時ぐらいから、深夜の1~2時までは執筆の時間にあてていますね。
――土・日曜日も執筆活動を?
Y.A
どちらかは、ほぼまる一日中執筆をしています。
朝に起きて、9時ごろから原稿を書き始める。
そしてイマイチ筆が乗らないと思ったら、マンガを読んだりYouTubeを見たりして気分転換。
リフレッシュできたらまた書き始めるという感じでしょうか。
それを夜まで続けていますね。
たまに終日外出をする場合もありますが、それでも夜寝るまでは執筆に時間を割くようにして、最低3時間は必ず書くようにしています。
――1日に何文字ぐらい書くのを目標にしているのでしょうか?
Y.A
文字数は厳密には決めていないんですよ。
というのは、1万文字書ける時もあれば、3000字ぐらいの時もあったりする。
その時の調子によってバラつくことがありますから。
――筆が乗らない時はマンガを読んだり、YouTubeを見たりするとのことですが、Y.Aさんにとって一番の気分転換の方法とは?
Y.A
そうですね……本当にダメな時は「外に出かける」でしょうか。
私は、神社・仏閣に行って御朱印を集めているのですが、本当にいい気分転換になるんですよ。
メジャーどころの神社は、その雰囲気も相まって空気が違うようにも感じますし。
よい運動にもなるからオススメですね。
――気分のリセットだけでなく、リフレッシュもできそうですね。
Y.A
作品のいいアイディアが浮かぶのも、やはり運動している時ですからね。
汗を流して頭に血を回すと、原稿も書けるような気がするんです。
なので自転車に乗って、あてもなく2駅ぶんぐらいの距離をサイクリングすることもありますよ。
――すごく健康的ですね。ほかに何か健康のために意識していることはありますか?
Y.A
最近は健康的な食生活を意識して、糖質を抑えよう、というのは心がけるようになりました。
なのでパンをブランパンにしたり、ご飯を玄米に変えたりはしています。
――もっとプライベートなことをお伺いできればと思うのですが、何か趣味はありますか?
Y.A
夏場だとハゼ釣りとかでしょうか。
釣りをすること自体も楽しいんですが、自分で潮の流れやポイントをチェックし、ここなら釣れるだろう! という気持ちで挑むんです。
それが当たってたくさん釣れればうれしいですし、外れて釣れなかったら残念……、という気になる。
ある意味ゲームみたいな感じで取り組むと、一層楽しめるような気がしますね。
まあ年に1回ぐらい、釣り場で絡まれることはあるんですが。
――絡まれるんですか!? どんなふうに?
Y.A
いろいろですね。
いきなりケンカ腰で話しかけられたり、ひたすら道具自慢を聞かされたり、お金をちょうだい、と言われたり。
――なかなか貴重な経験のような気がします。
Y.A
そうなんです。
なので、そういうところで出会った人たちをモチーフにして、作品内の登場人物を作ることもあるんです。
そういう意味では、ためにはなっているのかなと。
――すべてを創作活動の糧にしていて、まさに作家! というような印象を抱きました。ちなみに一番最初に読まれたライトノベル作品は何でしたか?
Y.A
多分『ロードス島戦記』だったかなと。
中学・高校の図書館にあって読んでいたのを憶えています。
あとは昨年に完結を迎えた『アルスラーン戦記』も読んでいましたね。
――「小説家になろう」(以下「なろう」)で投稿されている作品で最近お気に入りのものはありますか?
Y.A
書籍化もされた、イスラーフィール先生の『淡海乃海 水面が揺れる時~三英傑に嫌われた不運な男、朽木基綱の逆襲~』ですね。
朽木基綱という『信長の野望』では1ターンで潰されてしまうような小さい大名が、さまざまな逆境を乗り越えて天下人を目指す作品なのですが、主人公本人にすごく惹かれたんです。
なんだかんだ言いつつも、一歩ずつ前に進んでいくその姿勢がとてもいいなと。
気分転換として、よく「なろう」で作品を読むことがありますが、こちらの作品はずっと追いかけていますね。
――ではY.Aさんが「なろう」に作品を投稿し始めたきっかけとは?
Y.A
趣味の一環です。
じつは、最初は「なろう」に2次創作を書いて投稿していたんですよ。
その後に自分でオリジナルを投稿してみよう! と思って書き始めたのが『八男って、それはないでしょう!』(以下『八男』)でした。
――『八男』を執筆するにあたり、何か着想やテーマなどはあったのでしょうか?
Y.A
テーマというものではありませんが、最初はとにかく勢いで書いていましたね。
主人公が異世界に転生して……という流れは、「なろう」の作品の主流だと思います。
ですが、あまりテンプレに沿って書きすぎるのもイヤだなと思い、自分なりの色を盛り込んで書いたのが本作になります。
――Y.Aさんの色、とは?
Y.A
設定部分とかでしょうか。
今の「なろう」では、設定や展開がストレスフリーなところがあると思うんです。
ですが実生活ではもちろんそうですが、生きていれば身につまされるようなこともあれば、ままならないこともあると思うんです。
そういった現実的なところを混ぜる、みたいな感じですね。
なので『八男』の主人公・ヴェンデリンも、比類なき魔法の才を秘めていて、なんでもできるような気がする。
しかしながら、人間関係に足を引っ張られることがあったりして、貴族社会のしがらみが彼には常につきまとう。
そんな不自由さを入れこむようにしました。
――では主人公が「八男」である理由は?
Y.A
お話ししたような「ままならなさ」を顕著にするため、貴族のお話しにしようというのは最初から考えていました。
ですが貴族で長男となると、身動きがとれなくなってしまう。
なので次男にしようかと思ったんですが、次男は次男で部屋済み等々の悲惨な境遇で、身動きが取れないこともある。
じゃあ三男にしようかと考えたんですが、もっと下げてもいいやという気持ちになりどんどん下げて八男。
末広がりなのもいいな、と思ったのも理由のひとつですね。
――『八男』はタイトルもすごくキャッチーですよね。
Y.A
『◯◯転生記』とかにすると、分かり易いかもしれませんが堅苦しく感じてしまう。
それは避けたいなと思ったんです。
そして、私たちからしたら貴族ってやっぱりキラキラしているイメージじゃないですか。
でも八男。
「八番目はないでしょう!? せめてもうちょっと条件良くしてよ! 上にしてよ!」というツッコミ的なノリのタイトルにした、という感じですね。
――ちなみに、今まで作家として活動をしていて一番苦労したエピソードは?
Y.A
『八男』のドラマCDを制作していた時です。
アフレコに来てください、と言われて収録スタジオに行ったんですよ。
そうしたら「スタッフに御挨拶をお願いします」と編集さんから言われてしまい……。
「何を言えばいいんだよ!」と(笑)。
じつはあれが一番キツかったですね。
――5月25日にはオーバーラップより『勇者の活躍はこれからだ! 異世界からの出戻り勇者は平穏に暮らしたい』(以下『勇活』)が発売されます。こちらはどんな作品になっているのでしょうか?
Y.A
中学を卒業して、もうそろそろ高校入学だっていう時に、主人公の達也はいきなり異世界に召喚されてしまいます。
そして15年かけて魔王討伐の使命を果たし、ようやく現実世界に戻ってきたら就職すらできない。
それでも、農業でもやりながらゆっくりと暮らそうと思っていたら、変な権力者に目を付けられてしまい、返り討ちにしたら日本にいられなくなりました、というストーリーですね。
出戻り勇者系の作品だと、上手く元の世界になじむというのが多いと思います。
ですが『勇活』はそれになじめなかったほうの勇者を主人公にしました。
――先ほどお話しいただいたY.Aさんの色というものが、本作でも色濃く表れているような気がします。
Y.A
あんまり浮き世離れした要素を入れ過ぎてもアレですから。
「そりゃあ15~30歳まで空白期間があったら、就職活動も厳しいよ!」ってなるかなと(笑)。
現実のままならなさみたいなものは、本作でも盛り込むようにしました。
――ありがとうございました。では最後に『勇活』ファンと、「小説家」を目指す方へメッセージをいただければ。まずは『勇活』ファンの方へお願いします。
Y.A
オーバーラップさんが清水の舞台から一緒に飛び降りてくれるらしいので、買って読んで下さい(笑)。
表現上での自主規制とかは、なるべく少ないようにはしています。
ぜひとも楽しんでいただければと思います。
――次に「小説家」を目指す方へお願いします。
Y.A
小説を書いたけれども恥ずかしくてWEBに投稿できない、という人もいると思います。
ですが大丈夫です。
投稿しても、あなたの顔も名前も住所も読者の方は一切知らないですから。
しくじったと思っても大丈夫。
次の作品を書けばいいんですから。
心ない感想が来ることもあるかもしれませんが、スルー力があれば気になりません。
とりあえず、投稿しないと始まりません。
WEBの小説サイトだと、その匿名性が良い点ではあると思います。
楽な気持ちで一歩踏み出してみてください。

★白米さんからのリレーインタビュー★

――最近のではなく昔の「なろう」作品で好きだったものは?(白米)
Y.A
桂かすが先生の『ニートだけどハロワにいったら異世界につれてかれた』ですね。
主人公のマサルは自重しないタイプというよりは臆病なタイプだと思っていて。
折角チート能力を授かったのに、メインの思考は「安泰に暮らせればいいや」というものなんです。
でも日本人がスゴイ能力を突然手に入れたとしても、「俺様が世界を征服してやるぜ!」みたいな思考になる人っていないんじゃないかなあと。
能力を生かして静かにのんびり暮らそうみたいな人が多そうじゃないですか。
そんな日本人然としたマサルに共感できるところもあるので、印象に残っています。
――作品を読んでいて「こういう展開は許せない」というものはありますか?(白米)
Y.A
「なろう」作品で多いかもしれませんが、サブヒロインが主人公以外のキャラクターとくっつくのはちょっとイヤですね。
いっそ初めから「そのサブヒロインは主人公とは別のキャラが好き、という設定にしておいてよ!」と思ったことがあります。
自分ではそういった設定は作らないようにしているからこそ、イヤになるのかもしれませんね。
Profile

Y.A わいえー

作家。主な著作は『八男って、それはないでしょう!』、『インチキの力で、戦国の世を駆け抜ける。』(ともにMFブックス)。
オーバーラップノベルス より2018年5月25日に『勇者の活躍はこれからだ! 異世界からの出戻り勇者は平穏に暮らしたい』が発売される。
https://www.amazon.co.jp/dp/4865543511