第9回オーバーラップ文庫大賞特別編 十利ハレ

今回の「作家のしゃべり場Z」は特別編!
第9回オーバーラップ文庫大賞の受賞者、計3名のインタビューを一挙公開するぞ。
『スペル&ライフズ 恋人が切り札の少年はシスコン姉妹を救うそうです』(以下『スペルラ』)で〈金賞〉を受賞した十利ハレに、作品やその見どころについて、そしてオーバーラップ文庫大賞について聞いた。


――まずは『スペルラ』を書き始めたきっかけを聞かせてください。
十利
『スペルラ』はメインヒロインであるミラティアを書きたいと思い、始めた物語です。
ミラティアをかわいく書くためには主人公とは主従のような関係がいい。精神性を考えるなら人間じゃないほうが望ましい。こういうシーンがあるとミラティアのかわいさを表現できると思うから、そのためにはこういう世界観にして、主人公の過去もそれにならって設定して――といった感じで『スペルラ』が出来上がっていきました。
――十利ハレさんはオーバーラップ文庫大賞をどこで知りましたか?
十利
ライトノベルの公募をまとめたサイトか何かだったと思います。
――十利ハレさんが考えるオーバーラップ文庫のイメージは? そのイメージを踏まえて、本作をオーバーラップ文庫大賞へ応募しようと思った理由を聞かせてください。
十利
いわゆる「なろう系」の作品が多いイメージでした。
最初に応募しようと思ったのは、公募の中で締め切りが一番近かったからです。
二回目、三回目とそれからも継続して応募したのは、ほかの公募に比べて評価シートが充実していたことが理由です。
一次選考で落選しても評価シートがいただけますし、その内容も「一次落選でここまで詳しく書いてくれるのか!」と感心するほどでした。
――では評価シートで何か印象に残っているコメントは?
十利
メインヒロインのミラティアがかわいいという旨のコメントです。
応募の時点では特にそこが一番書きたいところだったので、ヒロインのかわいさが伝わったのなら書いたかいがあったと思えました。
――担当編集より受賞の連絡を受けた際の率直な気持を聞かせてください。
十利
電話を取ることができず、後からメールで受賞したことを知りました。
直接受賞の連絡を聞けなかったのは、ちょっとした心残りです。
ですが、もちろん小説家としてデビューするつもりで執筆活動をしていたので驚きはなく、やっとスタートラインに立てたことに安堵しました。
ただ、それがこの作品であることにのみ、驚きがありました。
プロットも書かず、息抜きに書きたいだけで書いた作品だったからです。
私は書いていて楽しかったですし好きな作品なのですが、クオリティは高くないし、まとまりもない。第三者に評価されるような作品ではないと思っていたんです。
だからこそ書籍化の作業はなかなかに苦労の連続でした。
――どのような苦労がありましたか?
十利
担当編集さんに原稿を読み込んでいただき、ほぼほぼ全編改稿を行ったことでしょうか。ですがそのおかげで、今は自信をもって本作を世に送り出すことができます。
またサブタイトル決めについても難航したのを覚えています。なかなかいい案が浮かびませんでした。
これに関しては、2巻でも苦労するだろうなあ、とぼんやり思っております。
そして、苦労と言いましたがどの作業も楽しく、プロの編集さんと関わらせていただけたことで、自分のレベルが上がっていることを実感しています。
この一年で物書きとして大きく成長できたのかなと。
――受賞にあたって、作品のどんな要素が一番評価された点だと思いますか?
十利
キャラクターですかね。
評価シートや総評でも褒められていたのはその部分でしたから。
自分としても物語を書くにおいて一番大事にしている点なので、キャラクターを褒めていただけたのはうれしかったです。
――本作のコンセプトを聞かせてください。また、そのコンセプトを大事にするため執筆時心がけたことがあれば、併せて聞かせてください。
十利
コンセプトは「何かに執着している女の子はかわいい」です。
まだ書かれていない部分を含め、本作のキャラクターは全員執着と呼べるこだわりや目的があります。
コンセプトの実現のために主に2つのことを意識しました。
まずは、読者のページをめくる手を止めないような書き方を目指し、会話はテンポよく、地の文はリズムよくクセを少なくすること。
そして2つ目に、ストーリー進行に合わせてキャラクターを動かさないこと。
ストーリー的にこのキャラにはこういう行動をとらせたい。本当はこの場面でこんなことしないと思うけど、言わないと思うけど……となった場合、キャラクターを曲げることはせずにストーリー自体を変えます。
これらは本作に限り心がけていることというわけではないのですが、一番意識したことではあるのでご勘弁ください!
――では、キャラクターデザイン・カバーイラストを始めて見た際の感想は?
十利
『スペルラ』の世界が一気に広がり、色がついたように思いました。
どのキャラクターもビジュアルがすばらしい!
衣装や表情など、それぞれのキャラクターらしさが出ていて、プロのイラストレーターさんの技術に感動しました。特にライフ組のミラティア、へレミアの衣装がお気に入りです。
たらこMAX先生には心の底から感謝しています。
――本作を(特に)どんな方に読んで欲しいですか? その理由と併せて聞かせてください。
十利
美少女が好きな方です。
本作は物語の性質上、これからもたくさんのヒロインが登場します。また、カードを使って僕(しもべ)を召喚するという点から、どんなヒロインでも出し放題。ヴァンパイアでもサキュバスでもエルフでも機械娘でもスライムでもドラゴンでもなんでもアリです。
すばらしいですね。
きっと、あなたの好みのヒロインも見つかりますよ!
――――最後に、オーバーラップ文庫大賞へ投稿をしようと考えている方へ、ひと言コメント(アドバイス)をお願いします。
十利
自分の欲望を、全力のおもしろいをぶつけてください。
今回の受賞作3作品は、いずれもレーベルカラーに合ったものや流行に乗った作品ではありません。つまり、オーバーラップ文庫大賞はそれらを選考の基準にしていないということです。
小手先の技術や全体のクオリティ、作家力という部分で、私たちは前線で何年も書き続けているベテラン作家には敵いません。
どこかで見たようなそれっぽい話なんて望まれていません。
己の唯一無二を全力でぶつけることをオススメします。
個人的な考えですが、新人賞は加点方式での評価だと思っています。
減点方式だったら私の作品は絶対に受賞していないので。
Profile

十利ハレ とおり・はれ

第9回オーバーラップ文庫大賞〈金賞〉を受賞しデビュー。
受賞作『スペル&ライフズ1 恋人が切り札の少年はシスコン姉妹を救うそうです』は2023年1月25日オーバーラップ文庫より発売。
https://www.amazon.co.jp/dp/4824003857