第7回オーバーラップ文庫大賞特別編 六海刻羽

今回の「作家のしゃべり場Z」は特別編!
第7回オーバーラップ文庫大賞の受賞者、計3名のインタビューを一挙公開するぞ。
『星詠みの魔法使い 1.魔導書作家になれますか?』(以下『星詠み』)で〈金賞〉を受賞した六海刻羽に、作品やその見どころについて、そしてオーバーラップ文庫大賞について聞いた。


――まずは『星詠み』を書き始めたきっかけを聞かせてください。
六海
『王道』な物語を書きたいと思ったのが一番最初のきっかけでした。あらゆる困難を乗り越えて主人公とヒロインが最後に絆を結ぶ。そんなありきたりだけれども魅力の詰まったラストシーンが書きたくて、そこに到達するため彼らにどんなドラマが必要かと物語の筋を組み立てていきました。
だから全てのきっかけは、最後に主人公であるヨヨがヒロインのルナに伝えた「あの言葉」なのかもしれません。ぜひ、本作を読んでいただければと!
――六海刻羽さんが考えるオーバーラップ文庫のイメージは?  そのイメージを踏まえて、本作をオーバーラップ文庫大賞へ応募しようと思った理由を聞かせてください。
六海
WEB発の小説を多く刊行していることからか、独自の強みがわかりやすい作品が多い印象です。あまりにも広大なWEBの世界で作品を見つけてもらうためには、そうした「作品独自の強み」「他作品との差別化」がはっきりしている必要があるのかなと。
そういう意味では王道な作品、悪く言えば「どこかで見た事あるような」展開である本作を応募することは一種の挑戦だったのかもしれません。
――オーバーラップ文庫大賞では、1次選考からすべての応募者に対して評価シートが送付されます。何か印象に残っている評価コメントは?
六海
「王道な展開ではあるものの、その期待を裏切らないおもしろさがあった」というコメントです。王道作品で勝負することに関する厳しさを匂わせながら、それでもおもしろいものを書けばきちんと評価されることを教えていただきました。
強烈な個性を放つ作品が数多くあるラノベ業界で、自分の愛する「王道」が戦っていけるのか。そうした不安を持っていた私にとって、このコメントは非常に励みになりました。
――担当編集より受賞の連絡を受けた際の率直な気持を聞かせてください。
六海
仕事から帰る途中に連絡をいただきました。驚きが強く、いただいたお電話に「はい」を連呼することしかできなかった覚えがあります。電話の直後からふつふつと喜びが湧き出し、最終的には夜の公園でガッツポーズをするという変人ムーブをかましてやりました。
――本作のコンセプトを聞かせてください。また、そのコンセプトを大事にするため執筆時心がけたことがあれば、併せて聞かせてください。
六海
「夢を追うことの大変さ、そして素晴らしさ」です。
それを伝えるために本作ではさまざまなキャラクターが「夢」に対する想いを持っています。それぞれの持つ悩みや葛藤を力強く表現するため感情描写には特に力を入れました。
――発売に向け、現在は書籍化の作業が進行中だと存じます。何か苦労されたエピソードはありますか?
六海
エピソードというほどのものではありませんが、改稿作業そのものが非常に大変でした。文章を加えるたび、文章を削るたび、本当におもしろくなっているのか? と常に悩みながら原稿と戦っていました。
――では、キャラクターデザイン・カバーイラストを初めて見た際の感想は?
六海
いや、もう、涙が出るくらいうれしかったです。
特にカバーイラストは主人公やヒロインはもちろん、ちょっとした小物や装飾から、イラストレーターのゆさのさんが本当に作品を読み込んで描いてくださったのだとわかり、うれしさとともに感謝の気持ちで心がいっぱいになりました。
――本作を(特に)どんな方に読んで欲しいですか? その理由と併せて聞かせてください。
六海
夢に不安を持っている人、ですね。子供の頃に憧れたキラキラの夢を追い続けられる人というのはごくわずかだと思います。走り続けている人、足を止めてしまった人、それぞれに不安があり、本作はどちらの側面からも夢に対する葛藤を描いています。
きっと正解なんてない夢への道ですが、ほんの少しでも本作がその道しるべになればと。
――数多くのキャラが登場する本作ですが、とくに難産だったキャラは誰でしょうか? 理由も併せて聞かせてください。
六海
主人公のヨヨですね。
強くて弱い魔法使い。矛盾する2つの側面が同居している彼を魅力的に映すため、彼の心情描写には特に力を入れました。
――逆に、最も描きやすかったキャラクターを聞かせてください。
六海
ヒロインのひとりであるエヴァです。
割と暴走しがちな彼女がいるだけで、文章の緊張と緩和のバランスが非常に取りやすく、書いていてとても楽しいキャラでした。
――六海刻羽さんが考える、本作でいちばんこだわって執筆した箇所はどんなところでしょうか?
六海
読んでいて気持ちの良い文章になっているか、です。
何度も出ていますが本作は「王道」な作品であり、他作品とどう差別化を図るか考えると、やはり自分の中では言葉の伝え方があがりました。
作品世界を鮮明に表現するため言い回しや言葉選びにこだわり、読者の目線になって何度も読み直しました。
それこそが自分の個性であると信じ、こうして結果を残せたことに安堵と喜びを抱いています。
――最後に、オーバーラップ文庫大賞へ投稿をしようと考えている方へ、ひと言コメント(アドバイス)をお願いします。
六海
自分の作品にイラストがつき、本になる。その喜びは格別であり、努力に足る魅力があります。
素敵な未来を想像し、心の燃料を絶やさないこと。それこそが書き続けるためのひとつの手段なのかなと。
皆さまの素敵な物語を期待して、応援しております。
がんばってください!
――ありがとうございました!

Profile

六海刻羽 りっかい・ときわ

第7回オーバーラップ文庫大賞〈金賞〉を受賞しデビュー。
受賞作『星詠みの魔法使い 1.魔導書作家になれますか?』は2021年1月25日オーバーラップ文庫より発売。
https://www.amazon.co.jp/dp/486554819X